夢幻

遠く揺らぐ幻影に
眉を顰めるは彼の者の過去か未来か
胸に潜めるは少しばかりの狂気

落ちゆく苦悶の残響に
脳裏を掠めた記憶は虚偽か真理か
一寸先を霞めた現実は恐怖を生む

持って生まれた好奇心と激しい疼痛によって
伸ばされた爪先が掴んだもの
それは…夢か幻か…


 

月下祈譚

手を伸ばせど至ることはなく
掬えど両の手より雫れ落ち
抱けどぬくもりは失われ
叫べど誰一人振り返らず
愛すれど互いに擦れ違い
嫌悪すれど身体は求め

脆い心は軋んだ音をあげ
やがて砕け散る…


惑いし者よ…
闇に抱かれ暫し眠れ
理不尽な痛みに疲れたのならば
僅ながらの休息を与えよう
どうか主に月の恩寵を…